悪魔は、人間の魂を食らうために闇から現れる悪の化身、といわれていた。

 聖書に語られる神とは違い、悪魔は永遠の時を生きることは出来ない。存在を存続させるためには、強い魔力を持った人間の魂が必要で、神の加護を持つ人間の魂は、条件を揃えないと取り出すことが出来ない――とされている。

 悪魔が人間の体から魂を取り出すには、『宣誓契約』でゲームの内容とルールを定め、対象の人間との勝負に勝たねばならない。

 それが絶対のルールだった。

 けれど、それはある時までは、ただの言い伝えでしかなかった。悪魔という存在は、聖書で伝えられているばかりで実物も実体も確認されてはいなかったのだ。誰もが、語り継がれる本の中の話だと思いながら、神や天使や奇跡の存在だけを信じていた。

 だが、とうとう≪一匹の悪魔≫が、月食と共に降臨し孤島にある学園に降り立った。

 初めて存在が確認された悪魔と対峙したのは、『皇帝』一族の嫡子だ。悪魔に『宣誓契約』を迫られた彼は、慎重にゲームのルールを定め、自分の将来の配下となる信頼のおける友人らと共に『宣誓契約』を承認した。