「今日からかぁ、、、」
新人の社会人、ではなくもう三年は社会人として過ごしてきた私が精神科の助手を務めることになってしまった。
そう、この新川唯が。
ずっと田舎の方で過ごしてきた私には都内なんていうものがよくわからないまま、働き出すというのは不安でしかない。
こうなってしまったのも理由がある。
昨年の四月、母と父が若くして他界した。
今年で23歳とはいえ、悲しいものだった。
そして私の気持ちとは裏腹に田舎ではすぐに広がり、声をかけてくれる人が多かった。
だけど、それは同情ばかり。
裏ではそれほどいい話題だったのか嘲笑われることばかり。
職場でも、近所の人でも、みんなそうだった。
そこで過ごす毎日は生きている感覚がしなかったようなもの。
そんな町に疲れてしまい、思い切って都内に住みを移すことにした結果、今日から精神科の助手として働くことになった。
不安と緊張が混じり、手が震える。
でも自分で選んだ選択肢、もう後戻りはできない。
覚悟を決めて、ドアノブに手をかける。
「行ってきます」
一人でも必ず言い、この言葉で今日を始める。