おり、視界から消えるのは実に一瞬だった。
 畑道を抜けて、車の通っていったあたりまで来ると、片側一車線線の細く、小さな道路になっていた。最低限車がすれ違えるだけの幅が用意されているだけで、歩道の区画が存在していない。通るには、車と共に車道を進むしかない。
 僕は左右のブレーキを同時にかけて停止する。元々速度を出していなかったので、すぐにタイヤの回転は止まった。
 左右を確認すると、車は一台も通ってはいなかった。畑に囲まれた土地に一本だけ走る道路だから、あまり車通りはない。僕は意を決して、車道に入った。車道を走らなければ、目的の場所へは辿り着けないのだ。
 本来なら、自転車で車道を走りたくはない。速度も遅ければ、人力で走行する自転車は安定性があまりない。ドライバーたちからすればいい迷惑に違いないからだ。だから僕は、基本的に歩道を選んで走る。だが歩道自体なければ、自動車と一緒に走らなくてはならない。
 なんだか申し訳ない気持ちになって、僕は後ろを振り返る。車はまだ見えない。しかしいつ姿を表し、僕に追いつくかもわからない。ひょっとすると、僕がやったように畑の間を縫って通ってきたトラックなどが急に顔を出すかもしれない。そうなればきっと、すぐに追いつかれるはずだ。
 僕は全力でペダルを漕いだ。一刻も早く車道を抜け出すために。
 この先にある、僕が目指す場所まで辿り着きさえすれば自動車の運転手に煩わしい思いをさせずに済む。少しも怠けずにペダルを漕げば防げる。僕は二度と背後を振り返らず、ただ無心で足に力を込め続けた。努力の甲斐あってか、ハンドルを切って道を曲がるまで一台の車にも追い越されなかった。ほっと一息ついて、胸を撫で下ろさずにはいられない。
 凸凹の道や車道を走破した先に待っていたのは、とある公園だった。
 公園といっても、駐車場に進入してすぐ目の前にあるのは小さな山。名義上、公園とされているが敷地内に遊具の類は一切存在しない。あるのは遊歩道やベンチ、あとは頂上に小さな展望台があるくらいのもの。バスケットコートも、走り回れるような広い芝生も、滑り台もない。少なくとも、子供たちが嬉々として遊びに訪れるような場所ではない。
 僕は駐車場の隅に自転車を停め、フレームと後輪の間にチェーンを通してロックした。チェーンは化学繊維でできた筒の中に金属が入っているもので、容易に切断できないような作りになっている。本来なら、フェンスや柱など動かないものと合わせて固定したかったが、近くにはなかったので諦めるしかない。ふと見渡せば、駐車場に停まっている車はたったの一台だけ。誰かの目に触れて、持ち去られる可能性は極めて小さいはずだ。
 理想とする固定を諦め、自転車を駐車場に残し、公園の中へと入る。
 山の形をできる限り崩さずに作られたらしいので、整備された道はあるが随分な傾斜が