【陽音side】
二学期が始まって十日ほど経ったある日。
「ハルのことが好きです。俺と付き合ってください」
相変わらず、カイくんは私に告白してくる。
今日は屋上で。
九月の生ぬるい風が頬なでて二人の髪の毛をゆらり、ゆらり、と揺らす。
「ごめんなさい」
返事はいつもと同じだ。
だって、私は幸せになっちゃいけない人間だから。
それに、もうカイくんのことを利用しようだなんて酷いことは思っていない。
きっと、あの時カイくんは分かっていたんだろうな。
『……今のお前とは付き合いたくねぇかな』
そう言ったのは自分のことを本当に好きじゃないと分かっていたからだ。
今思い返してみても最低なことをしたなぁ、と心の中で反省する。
というか、カイくんが最初に告白してきてくれた日から本当に毎日のように告白してくるなんて思ってもいなかった。
そして、何より心の変化があったのは私の方だ。
カイくんのことが嫌で仕方なかったはずなのに、いつの間にかそんな気持ちもどこかへと消えて、今では告白は断っているものの話しかけてくれると普通に言葉を返している。
「はぁー、また俺の告白は玉砕かよ」
「ドンマイ」