家までの帰り道、さっきからずっと思っていたことを口にした。
私があんなバカなことしなかったらカイくんがこんなにも濡れる必要もなかったのに。
「ホントだよなー、これ気に入ってたのに」
「えっ!?ごめん!!」
「ウソだよ。こんな服、ハルの命と比べたら安いもんだし、洗ったらまた着れるし気にすんな」
太陽のように眩しい笑顔は暗闇の中でも輝いて見えた。
カイくんってなんか不思議だなぁ。
明るい時もあれば、ときに切なく表情を曇らせるから。
でも、私が踏み込んでいい領域じゃないって分かっているから何も言わない。
「ウソつくなんて酷いなぁ。でも、ありがとう」
「まあ、服の替えはきくけど、ハルの命は一つだからな」
ほら、今だって……。
笑っているけれど、その笑顔の中に苦しみが滲んでいる。
たぶん本人はそんなことには気づいていないんだろうけれど。
「……なんかカイくんって意外と真面目?」
「お前、今更かよ……!」
切なげな表情は一瞬だけで、すぐにふにゃりと笑って無かったようにされるのだ。