にこりと小さく微笑んだカイくんの瞳が少し潤んでいるように見えたのは私の気のせいだろうか。
「俺はどんなハルも好き。大好きなんだ」
「……っ」
そういえば、そんなこと言われていたな。
すごく嬉しかった。
でも、嬉しすぎて頭からすっかりと抜け落ちていた。
「これで、分かった?」
「……うん。でも、今日はもう暗いし帰ろ?」
服だってずぶ濡れだし、いくら夏だからといっても風邪引いたら大変だし、夏風邪は長引くって聞くから。
そう言ったけれど、本当は話すのに心の準備がいるだけなのかもしれない。
だけど、ちゃんと話すから。
二学期になったらちゃんと君の目を見て話すから。
それまで、待っていて。
「うん、そうだな。送ってくよ」
その言葉にコクンと頷いて、二人で岸まで歩く。
月明かりが私たちを優しく照らす。
その光はまるで、優しかった渉くんのようで“彼と出会えて、よかったね”と言われているようだった。
「カイくん、ごめんね。こんなにずぶ濡れになっちゃって」