室さんだって彼がそういう人だったからこそ、悲しくても、辛くても、それを隠して無理矢理でも前を向くしかなかったんだ。

それなのに私は何の考えもなしに酷い言葉を浴びせて……本当に何をしているのだろう。


「死ななくてよかった……。ハルが……生きていてくれて俺は嬉しいよ」

「カイ、くん」


渉くん、ごめんなさい。

私は君が一番嫌がる自ら命を絶つようなことをしようとしていた。

怒っているよね……でも、正直今でも消えてしまいたいと、君に会いたいと、そう思っていることは変わらない。
だけど、少し、ほんの少しだけ前を向けるかもしれない。
そう思い始めている自分もいるよ。

それは全部いま私を強く抱きしめているこの人のおかげ。


「カイくん……カイくんはどうしてここまでしてくれるの?」


こんなにびしょびしょになってまで私を助けて、私が間違えた道を進みかけたら本気で怒って元の道に戻そうとしてくれる。

そして、何よりこんな私をずっと好きだと言ってくれる。それが私にはさっぱり分からない。