小さく私の名前を呼ぶと、手が伸びてきて私の頭をくしゃりと撫でる。

それから数十分間、滝沢くんの腕の中で泣き続けた。

滝沢くんはその間、何も言わずに私をずっと抱きしめてくれていた。


「目、真っ赤だぞ。可愛い顔が台無しだな」

「可愛くないし……」


私が泣き止むとまるで何にもなかったかのように言葉を投げかけてきて、ゆっくりと歩き出した滝沢くん。

滝沢くんの隣をぎこちない足取りで歩く。

彼がちゃんと私の歩幅に合わせて歩いてくれていることに気がついて、胸に温かい感情がじわりと湧いてくる。


「可愛いよ、ハルは」

「そんなこと言ってもなんにも出てこないよ」

「いやマジで。この俺が言ってんだから素直に喜べ」

「いやあんたが言ってるから喜べないの」


滝沢くんがあまりにもいつも通りに接してくれるから私もつい、いつものように冷たくあしらってしまう。


「なんで?」

「だって、チャラいじゃん」

「はぁ?俺のイメージどうなってるわけ」


不貞腐れたように眉間にシワを寄せて、私のおでこをコツンと軽くつついた。

小さな刺激が額に走るけれど、それよりも胸の鼓動の音の方が大きくてそれほど痛みを感じない。


「ヘラヘラしてるイメージ」