でも、振り向くことはせずにそのまま歩みを進める。

すると、後ろからグッと腕を掴まれた。


「待てよ」


抵抗する気すら起きずに立ち止まると、何を思ったのか私のことを呼び止めた張本人、滝沢くんは再び歩き出した。

そしてしばらく歩いて、近所の公園に入ると足を止めた。


「……何があったんだよ」

「……な、んでも……ない……っ」


泣きすぎて声を詰まらせる。だけど、途切れ途切れになりながら必死に言葉を紡ぐ。

こんなに泣いているのだから誰だって嘘だということは分かる。

だけど、滝沢くんは「そっか」と騙されてくれた。

きっと、わざとだ。

それが彼の何気ない気遣いと優しさなんだと思う。

次の瞬間、何故か私の体は彼の優しいぬくもりに包まれた。


「えっ……?」


突然のことに驚きの声を洩らす。

どうして……私は抱きしめられているの?


「一人で泣くんじゃねぇよ」


今まで聴いたことがないくらい酷く切ない声が耳に届き、胸がギュッと締め付けられる。


「泣きたい時は俺が抱きしめてやる。何も言わないから、お前はひたすら泣けばいい」

「な、に……言って……」

「俺がお前の泣き場所になってやるから」