おばさんだって辛いんだ。たった一人の愛する息子を失ったのだからきっと私の何十倍も。
そんな中で私を想って言ってくれているのだとちゃんと分かっている。
だから、
「……分かりました。本当にありがとうございました。そしてごめんなさい」
そう言うしか選択肢が残されていなかった。
彼のことを忘れるなんてできるわけがないのに私の口は平然と嘘を吐いた。
だって、嘘をつく以上におばさんの優しさを踏みにじることが私にはできなかったから。
「私の方こそ、ありがとう。あの子の分まで幸せになってね」
おばさんは彼とそっくりな小さな笑顔を私に向けるとお墓の方へ戻っていった。
その場に残された私は溢れて止まらない涙をぼろぼろと流しながらも家に帰るためにのろのろと歩き出した。
人の目なんて気にする余裕がないほど胸がいっぱいいっぱいで、まるで切り傷が風に触れるように心が痛む。
忘れたくないのに忘れなきゃいけない。
その辛い現実が私の胸をよりいっそう強く締め付け、苦しくてたまらなかった。
「……ハル?」
耳に入ってきたほぼ毎日のように聞いている声。
誰かなんて、顔を見なくても分かった。