そしてなぜか彼の眠っている場所から離れたところに連れてこられて向かい合う形になる。
「あの……どうしたんですか?」
さっきからずっと暗い顔をしているし、私と目を合わせようとはしないおばさん。
これから何を言われるか少しだけ想像がつくから聞きたくない。身勝手なことはわかっているけれど、それが本音だった。
「陽音ちゃん、せっかく来てくれてありがたいんだけど……もうこれで最後にしてほしいの」
「……っ」
当たってほしくない予想が的中してしまい、握っていた拳に爪が食い込むほどグッと力が入った。
「あの子のことはもう忘れて、陽音ちゃんの人生を歩んでいってほしい」
「ど、どうして……っ」
「それがあの子の願いでもあると思ったから……あの子のことはわたしたちが覚えてる。だから、陽音ちゃんは忘れていいの」
そんなことできるわけがない。
私だけが彼のことを忘れてもいいなんて……。
私だけが彼を忘れて自分だけのうのうと生きていくなんて無理だ。
こうなったのも全部私のせいなのに私だけが忘れていいだなんてそんなの、そんなのあんまりだよ。
忘れられないよ、大好きなんだもん。
ずっとずっと大好きだった人。