「ふざけんな。変な思い込みしてんじゃねぇよ」
「なっ……!」
自分の体を大事にできるのは自分だけだ。
他人にも守ることはできるけれど、身体だけじゃなく心も最後に守れるのは自分だけ。
なのに、どうして自分から捨てるようなことをするんだよ。
一体、なにがあったんだよ。
何がお前をここまで変えてしまったんだ。
「家まで送ってやるから教えろ」
「……教えるわけないでしょ。なんであんたなんかに……」
険しい顔つきのまま、俺を鋭く睨みつける。
そんな顔すんなよ。せっかく可愛い顔が台無しだろ。
お前にそんな顔は似合わないんだよ。
今でも瞼を閉じれば、思い出す。
あの日の君の笑顔は俺が生きてきた中で一番優しくて春の陽だまりのような笑顔だった。
その輝かしい笑顔はどこかへ消えてしまい、今は黒い霧が彼女を覆っているように感じる。
「ごちゃごちゃうるせぇーな」
雪のように白くて、今にも折れそうなくらい細い楠川の腕を痛くないように掴んだ。
「快人……!大丈夫か!?」
「なんもされてねえか?!」
そんなとき、走って駆けつけてきた侑歩と雄一は俺たち二人を交互に見ながら言った。