だけど……彼女の様子がおかしいと気づいたのは高校二年に入ってすぐのこと。
比較的、明るくてフレンドリーだった楠川は高二に上がるにつれて、俺の大好きな笑顔を見せなくなった。
誰とも話そうとしないし、唯一、話すのは仲のいい中森江奈だけ。
好きな人はいつの間にか変わってしまっていたようだった。
「はぁ……何があったんだよ」
一人で少し後ろを歩きながらボソッと言葉をこぼす。
誰も聞いてないだろうし、前を歩いてる二人はケタケタと腹を抱えて笑いながらSNSで流行っている動画の真似をして遊んでいる。
後ろから見てたら不審なヤツらだぞ……?と、思うけれど真似をするみんなを見て噴き出しそうになったのをグッと堪える。
「おい、あれって楠川じゃね?しかも、絡まれてんの青学のやつだぞ!まじやべーよ!」
「青学って……優等生ぶってるけど裏は悪い奴らばっかりって聞いたことある」
前を歩いていた二人が急に足を止めて、視界に映る景色を見てそんな会話をしていた。
“楠川”
その単語が出てきた瞬間、俺は何も考えずに二人よりも前に出ててみると、彼らが見ていたのと同じ光景が視界に入った。
「楠川……!?」