唯一の家族である母さんは……いま、病院で入院している。
だから、静まり返ったこの部屋で朝までの時間を一人で過ごす。
どうしようもない寂しさを埋めるために夜遊びをすることも多々ある。
今日だってそうだ。
これから、クラスの奴らと集まってゲーセンとかそのへんをぶらぶらと遊び回る予定だ。
遊べるうちに遊んでおきたい。
今しかできないことだって、この世の中にはたくさんあるのだから。
俺は制服から着替えるためにクローゼットを開けて、私服を取り出す。適当に手に取った黒いパーカーを着て、財布とスマホだけ持つと鍵を掛けて家を出た。
できるだけ家にいたくない。
あの思い出の詰まった部屋で俺一人だけで過ごすのはあまりに孤独で、底知れぬ悲しみに誘い込まれてしまうからだ。
だから、学校から帰宅してからたった数十分で俺はいつも家を出る。
一人でいるのが嫌なわけじゃない。
ただ、一人になると思い出したくない事を思い出してしまうからいたくないんだ。
「おーっす。お待たせ」
「おぉー!快人!今日はどこ行く?」
集合場所に着くともうみんな集まっていて俺が一番最後だった。