【快人side】


『いらない……余計なお世話。そういうの鬱陶しい』


つい先程クラスメイトの楠川陽音に言われた言葉が胸にズシンと重くのしかかっている。

屋上でフェンス越しにグラウンドをぼんやりとした頭で見渡すと、カキーン、カキーンと野球部のみんなが練習している様子やサッカー部が必死にボールを追いかけている姿やパンッ!という音と同時に走り出す陸上部が見える。

……俺も久しぶりに運動してぇな。

つーか、俺……振られちまったんだよな。

なんかそんな感じが全然しねぇんだけど。
多分、振られることなんて想定内だったから心の準備が出来ていたんだと思う。


「あーあ……嫌われちまったかな」


振られたことよりも嫌われてしまったんじゃないかと、どうしようもない不安にさいなまれる。

なんで……あんないきなり冷たくなってしまったんだろう。

最初は普通に会話をしていたのに……俺が彼氏気取りしてしまったせい……?

それとも、気安く触れてしまったからだろうか?

考えても考えても答えなんて出てこなくて、しばらく屋上で風に当たってから家へと帰った。





「ただいま」

返事は返ってこない。

いつも、家に帰っても誰もいないからである。
父さんは俺がまだ幼い頃に亡くなってしまった。