そっと、瞼を閉じれば、頭に浮かんでくるのは彼が陽だまりのようなあたたかい笑顔を浮かべている姿。


───『幸せになれよ……陽音』


あのとき彼が見せた笑顔は今までとは違い、笑顔の中に苦しみや悲しみが滲んでいるような、そんな笑顔だった。

私の頭の中には彼のすべてが今でも消えないまま、焼き付けられている。

忘れなきゃいけないって……言われているのに。


ねえ、渉くん。
あなたは私に幸せになれって言ったけれど……私にその資格はないよ。

ずっと、渉くんが好きだよ。大好き。

渉くんが胸が張り裂けそうなほど苦しく、辛い思いをしたのに私だけがのうのうと幸せになることなんてできない。

それが渉くんを想う気持ちだ。


会いたいよ。

声が聴きたいよ。

笑顔が見たいよ。

頭を撫でてよ。


どうして、どうして私を残して一人遠くに行っちゃったの。