何を言っているの?
私はこれ以上話したくないから一人で先に帰るのに……滝沢くんと一緒になんて帰るわけないじゃん。
「いらない……余計なお世話。そういうの鬱陶しいから」
私は彼の顔を少しも見ないで、吐き捨てると、精一杯の力で掴まれている腕を振り払うと同時に走り出し、屋上をあとにした。
ローファーに履き替えて校舎を出てからは走ることをやめて、走ったせいで乱れた呼吸を整えながらゆっくりと歩く。
その足取りはとても重くて、まるで足に鉛のような鉄の球がついているように感じてしまう。
なんで私がこんなに罪悪感を感じなきゃならないのよ……。
その罪悪感とは、屋上に滝沢くんを残してきてしまったことと彼の優しさを踏みにじってしまったことだった。
……最低なことを言ったくらい分かっている。
だけど、私に優しくしないで。
私は人に優しくしてもらう価値のある人間じゃないから。
───『あのさ、好きなんだけど』
ふと、滝沢くんが告げた言葉が頭の中に浮かんでくる。
私は滝沢くんのその気持ちには一生応えられない。
だって……私には好きな人がいるから。