―――数ヶ月後。

校庭に咲き誇る満開の桜の木。淡いピンク色の小さな花びらがひらりひらりと可愛らしく舞う季節。

私たちは高校を卒業する日を迎えた。

あれから、カイくんは手術をして完全に聴力を失ってしまい、学校も途中から特別教室で受けることになり、離れ離れになってしまっていた。

まあ、こうして無事に一緒に卒業できただけでも十分すぎるくらい嬉しいんだけどね。

術後、最初は少し引きこもりがちだったけれど、彼は聴力を失う前から手話の勉強をしており、増田くんと浜松くんも一緒に勉強しているらしく、二人の励ましもあって今の彼は以前のように太陽のように明るいままだ。

ちなみに私も最近、手話教室に通っている。
少しでもカイくんと楽しく話せたらいいなという気持ちで。

兎にも角にも、カイくんはとても強い人だから今は自分の運命を受け入れて懸命に生きているのだ。

生きてくれているだけで、ただそれだけでいい。

たとえ、二度と私の声が君に届かなくてもきっと心には届いているから。

出会った時のように桜の木の下でひらりと舞う花びらを見上げていると、ふと視線を感じて、そちらにゆるりと視線を向ける。

すると、そこにはポケットに手を突っ込んで、私の大好きな太陽みたいに眩しい笑顔を浮かべた彼が立っていた。

まるで、あの日のような再会だ。