見上げた視線の先でカイくんが申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「どうして言ってくれなかったの……っ」

「言ったらさ、お前が泣くかなって思って」


ごめん、と困ったように笑った。

泣くかなって……泣くに決まってるよ。
大好きな人が苦しんでいるんだから。

カイくんのバカ……!


「心配するじゃん……!!どんな私も好きだって言ってくれたみたいに私もどんなカイくんだって好きに決まってるじゃん!」

「そっか……ありがとな」


そう言ったカイくんは目にいっぱい涙を溜めていた。

たとえ、耳が聞こえなくなって私の声が君に届かなくなったとしても、私はいつまでも君に恋をしてる。

耳が聞こえなくなっても違う方法で君に最大級の愛を伝え続けていくよ。


「耳が聞こえなくなる前にハルの歌声……聴けてよかった……っ」


私の頬に手を当てて、そっと柔らかく目を細めたカイくん。

その言葉に私は言葉が声にならず、その代わり首が取れそうになるくらい何度も頷いた。

体育館のあちこちから温かな拍手や「おめでとう」と祝福の言葉が飛んできた。

そう言えば、ここって体育館だった。

増田くんと浜松くんは親友の長年の恋が実ったこともあり、二人とも静かに涙を流して肩を震わせていた。