歌い終わると、体育館いっぱいに響くほど一斉に喝采の拍手が鳴る。
体育館をぐるりと見渡すと、たくさんの人の瞳から私と同じように涙がこぼれ落ちていた。私の気持ちがここにいる人たちにも伝わったのかな。
そんなことを頭の片隅で考えながら、私は肩からかけていたギターをそっと置いて、一目散に愛おしくて仕方のない彼の方へと駆け出した。
ずっと、会いたかった。
もう会えないのかと何回、何十回も思った。
だけど、神様は最後に私にはチャンスをくれた。
大切な渉くんを亡くし、一度は歌うことをやめた私がまた歌いたいと思うようになったのは、カイくんがいたからだ。
そして、カイくんのために歌いたいと強く思った。
きっと、天国で渉くんも私の歌声を聴いてくれているのだろう。
ねえ、渉くん。
私……絶対、幸せになるから。
あのとき、命を懸けて守ってくれて本当にありがとう。
渉くんがくれたこの命で一生懸命生きて、世界で一番幸せになるよ。いつかそっちで会えた時にたくさん話すね。
「カイくん……っ」
愛おしい人の名前を呼ぶ。
カイくんは黙ったまま、自分の手で目を抑えていた。
その間からぽたぽたとこぼれ落ちる綺麗な透明の雫。
「ハル……っ」
ずっと聴きたかった、愛しい人の声。