本当は息をしているのすら苦しいくらいで未来が見えないどころか明日すら見えない。

ある日突然、ずっと私の世界を照らしていた光を失ってしまい、それからは出口のない暗闇の中で、ずっと一人彷徨っているのだ。


「まあ、お前が可愛いからひがんでんじゃね?」

「な、何言ってんの……!?可愛いなんて嘘ばっかり言わないで!」


なんでそんなに恥ずかしがらずに言えるのかが不思議だよ。

滝沢くんは人気者で女の子と関わることも多いから言い慣れているんだろうな。

一体、本気で『可愛い』って言ったことがあるのは何回なんだろう。


「嘘なんてついてどーすんの?」

「そんなの私が知ってるわけないでしょ!」

「んじゃ、ほんとっていうわけで」


というか……私ってば、なに普通に滝沢くんと話しちゃってるのよ。

でも、思っていたとおり彼はフレンドリーでお調子者のチャラい感じの人だ。


「もうなんでもいい。私、帰るから……じゃあ、さようなら」


私はカバンの持ち手をギュッと握りしめて視線を落としながら足早に彼の横を通り過ぎようとした。

だけど、滝沢くんにグッと腕を掴まれて動きを止めた。


「待てよ、家まで送る」


……は?