大きく、大きく、息を吸って私が今出せるすべてを声に詰め込んで音にする。
「桜舞う季節、僕は君と出会った」
そして、肩からかけているギターを覚えたとおりに弾いていく。
何度も家で練習して最初は上手くいかなかずにやり直しを繰り返して、やっと問題なく弾けるようになった。
歌い出せばもうあとは感情のままに歌うだけだ。
ギターが奏でる音に声をのせて……どうか、君の心に届きますように。
ただ、大好きな君に届けたくて、大好きなカイくんのことだけを想って歌う。
大切な人を忘れられなくて、もがき苦しんでいたときにそっと手を差し伸べてくれた君。
どんなにその手を振り払っても君は何度も私の前に現れ、その度に手を差し伸べた。
辛い時は何も言わず、そっと抱きしめてくれた。
あれ、本当は嬉しくてたまらなかったんだよ。
優しいだけじゃなくて、ちゃんと叱ってくれた。
あのとき、君がいなかったら私は今ここにいなかっただろう。
君のすべてが壊れかけた私を包み込み、いつの間にか太陽のような君に恋に落ちていた。
「君が流した涙の分、僕がその何倍も笑顔をあげよう」
君と私が大好きなこの曲。
想いを伝えるのにはピッタリだと思ったんだ。
まるで、私たちのためだけに作られたような曲だと思ってしまうほど。