当たり前だけれど、ほとんどの人がこちらに視線を向けている。こんな中で緊張しないわけがない。

今だって、自分の心臓の音がばくばくとうるさいくらいに身体中に響いている。

でも、私には今日しかない。
今日を逃してしまえば、もう二度とチャンスはないから。

私が増田くんと浜松くんに頼んだのは『文化祭の有志の最後の時間に彼を体育館に連れてきてほしい』ということだった。

彼らはそれを最後の頼みならと受け入れてくれた。

カイくんが何と言おうとも、説得して連れて行くから安心してほしいと言ってくれた。

あとは、私が頑張るだけだ。

騒がしい鼓動を落ち着かせるように深呼吸をしてから大きく息を吸って、ゆっくりと口を開いた。


「わ、私には……!どうしても気持ちを伝えたい人がいます……!」


マイクに向かって、必死に言葉を紡いでいく。

その言葉にシンと恐ろしいほど静寂に包まれた体育館。

みんなの視線が痛いほど突き刺さってどうしようもなく、逃げたい衝動に駆られる。

だけど、ここで逃げたら終わりだ。

大丈夫、大丈夫……と心の中でまるで呪文のように何度も唱える。


「それをこの場を借りて、伝えたいと思います」


……大好きな君へ。

ありったけの想いをこの声にのせて君に届けるから──。