バシッ、と私の肩を叩いてからお客さんが座っている表に接客をしに出て行った江奈。
割と痛かったんですけど……!と、ツッコミながら私もお店の方に向かう。
カイくんがいたら、今の私を見て褒めてくれたんだろうか、なんて思いながら。
午前だけシフトを入れてある。
午後は大切な予定が入っているから入れないことをクラスのみんなに説明したら快くOKしてくれた。
私がこんなにもクラスに打ち解けることができたのもカイくんのおかげだ。彼には本当に感謝してもしきれないくらいたくさんのものをもらった。
「いらっしゃいませ」
接客したりするのは好きじゃないし、苦手だけどクラスメイトのためにも頑張らないといけないから必死に笑顔を作って、口を動かす。
ねえ、カイくん。
私は君のおかげでこんなにも笑えるようになったんだよ。
彼が私に何度も手を差し伸べてくれたから。
だからね、今度は私が君に手を差し伸べるよ。
*
「陽音、そろそろ行かないといけないんじゃない?」
「でも……」
時刻は午後1時を指している。
だけど、そんな時に限ってお客さんがたくさん入ってきて、出るに出られない。
どうしよう。早く行かないと間に合わない。
「いいから!ここは私たちに任せて!私、もう陽音に後悔してほしくないから!」
「江奈……」
にっこりと優しい笑顔で私を見送ってくれる頼りになる親友。