「口止めされてたのにごめん。でも俺も侑歩と同じ気持ち。お前、入院してからもずっと楠川さんのこと気にして俺らに様子とか聞いてきてたじゃん。楠川さんもお前と同じでずっと俺らに“今度はカイくんに何があったの”ってしつこいくらい聞いてきててさ。俺らだってお前に幸せになってほしいんだよ」


二人の言葉が痛いくらい胸に突き刺さって、温かい熱でじんわりと溶ける。


「でも、俺はもう会えない……こんな姿で会ったってハルを傷つけるだけだ」

「楠川さんが、文化祭の日……快人に絶対に観に来てほしい時間があるって言ってた。だから、その時だけ楠川さんに会わないか?」

「……え?」


俺に観に来て欲しい時間?
一体、ハルは何をするつもりなんだ?


「最後のお願いだって言ってたよ、楠川さん。それくらい叶えてあげなよ」


二人があたたかく穏やかな声で言う。

そんな二人の優しさに溶かされるように俺は小さく頷いた。


「……わかった。行くよ」


俺がぽつりと言葉を零すと、二人はにっこりと満面の笑みを浮かべて俺の肩をポンと叩いた。