手話の本をじっと見つめながら物思いにふけっていると、突然、病室のドアが開く音がした。

ハッとしてそちらに視線を向けると、


「よー、快人。暇してるかなと思って来てやったぞ」

「感謝しろよ」


なんて言いながら雄一と侑歩がコンビニで買ったであろう袋をぶら下げて入ってきた。


「お前らまた来たのかよ」

「そんなこと言って俺らが来るの待ってたくせにー」

「ほんと素直じゃねぇんだから」

「うるせぇよ」


俺は急いで机に置いてあった手話の本を横の棚に表紙を伏せて置いた。

二人には手話の勉強をしていることは伝えていない。伝えたところで何かがあるわけではないし、俺のことなんて気にせずに普通に話していてほしかったから。

二人はスクールバックを床に置くと、丸い椅子に腰を下ろした。左側に侑歩、右側に雄一。これがいつもの定位置だ。


「今日コンビニでさ、お前が好きそうなスイーツ新作で売ってたから奮発して買ってきたんだ!」


雄一が嬉しそうに頬を緩ませながら袋からスイーツを取り出して俺の前に置いてくれる。


「さんきゅー」

「コイツ、意味わかんねえくらい買おうとするからまじ大変だった」

「なんか雄一が怒られてるところ想像できるな」


侑歩はしっかりしているけれど、クールなやつだからほぼ真顔で『買いすぎだ』とか言って怒って雄一がしょぼんとしながらカゴの中のスイーツを戻しているところが頭の中で想像ができる。