どうしたらいいのかわからない。

心の中が暗いもやもやとした不安の霧で満ちてくるのを感じて俺は部屋から出た。

それから誰かに相談することもできず、手術を受けるのか受けないのかをずっと悩んでいた時にハルの過去を知った。

彼女の抱えていた傷は俺が想像していたより何十倍も深く辛いものだった。

何度も自分の過去の行動を非難して、苦しんで、命を絶とうとした彼女が徐々に前を向いて歩いていこうとする姿に俺はやっと決意を固めた。手術を受けて生きよう、と。

たとえ、耳が聞こえなくなって彼女とは一緒に生きられなくなったとしても、この恋を諦めることになったとしても、またいつかどこかで彼女の笑顔が見られるならそれでいいと思ったから。

手術を受けることを親戚に話すと母さんを施設に入れることを勧められ、こんな身体の俺が抵抗することもできず、素直に親戚の意見を聞くことしかできなかったけれど、結果的に母さんとはいい形で施設に送り出すことができたからからよかったのかもしれない。

それも全部、ハルのおかげだ。
俺が、今を生きたいと思えたのも彼女がいたから。