数秒後、俺の瞳からぽろぽろと大粒の雫がこぼれ落ちた。
『うぅ……っ』
俺の嗚咽が静寂に包まれた部屋に虚しく響いている。
そんな俺の背中をそっと優しくさすってくれる先生。
苦しい。悲しい。辛い。
すべての感情が一気に心に押し寄せてきてそれが恐ろしいほどの不安へと変わる。
俺はこれからどうすべきなんだ。
手術をすれば、生きられる。だけど代わりに聴力を失う。
それはまだ18の俺にとってはあまりにも残酷な現実だった。
神様なんていない。いたとしても俺は嫌われている。
どんなに頑張っても試練ばかり与えてくる。
もう、乗り越えられない。一緒に乗り越えてくれた母さんも今はいない。無理だ。
『ちょっと……考えさせてください』
しばらく泣いた後、ぽつりと潤んだ声でそう言った。
すると、平尾先生は何も言わずに一度だけ深く頷いてぽん、と俺の肩を叩いて部屋を出ていった。
死ぬか、生きるか。
いや、生きていたとしても生き地獄のようなものかもしれない。
それでも俺は生きたいと思えるのだろうか。
一人、残された部屋の中で頭を抱えて自分の将来について考える。