『手術すれば、耳が聴こえなくなる』
増田くんは、はっきりとそう言った。
彼らの瞳にも薄く涙の膜が張っていて、親友を想って辛いことが痛いほど伝わってくる。
それもそうだ。
大事な親友の体の一部が機能しなくなるのだから。
音楽が好きなカイくんは、きっとそれが受け止められないんだろう。
神様はなんて、ひどく残酷な人なのだろう。
お母さんには忘れられてしまって、自分は手術をしてしまったら聴力を失ってしまうだなんて……カイくんの心情を思うと胸が張り裂けそうなほど痛む。
残酷すぎる。カイくんは必死に生きているのにどうしてそんなに試練ばかり与えるの?
「楠川さんに迷惑はかけられないからアイツは身を引いたんだと思う」
「誰よりも、楠川さんのこと想ってるから」
二人の言葉の意味が今の私には痛いくらい分かる。
いつもめげずに話しかけてきてくれて、真っ直ぐで、素直で、いつも海のように広い心で私の全てを受け止めてくれて、誰よりも私のことを想ってくれているそんな太陽の光のように優しい人。
「うん……っ」
「だから、会いに行くのは……やめてほしい」
「きつい言い方をしてるっていうのは分かってる。でも、アイツは楠川さんのことを想ってずっと黙ってたんだと思うから……だから、ごめん。楠川さんには居場所を教えないって約束したから」