こんなところに来ても渉くんとは会えないのに私の心は無意識に彼の姿を探している。


今、何しているのかな?

もしかしたら、誰かと笑い合っていたりするのかな?

それとも、一人で寂しくなってしまっていたりする?


頭の中が彼のことでいっぱいになってしまうのはいつものことだ。

こんなふうに会えなくなるほどの距離ができてしまう前から、ずっとそうだった。

初めて好きになった人だった。
私の大事な初恋だった。

いや、今でもずっと大好きなままで私の心を埋め尽くしている。


「ねぇ、会いたいよ……」


かかとを地面から少し浮かせて、ぐっと手を茜色に染まる空に、傾きかけた太陽に向かって伸ばす。

今日も、もうすぐ一日が終わるよ。
またあなたのいない一日がなんとなく過ぎていっちゃった。

渉くんのことを想うだけで胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなる。

会いたくても会えないなんて嫌だよ……。

どんなに手を伸ばしてもあの太陽には届かない、触れられない。


「不良少女はっけーん」

「えっ……?」


突然、入口の方から声がして驚きながら視線をそちらに向けると、ポケットの中に手を突っ込みながら気だるそうに立っている滝沢くんがいた。