そう言われて、はっとした。

カイくんは私に会いたくなかったのだ。会いたいと思っていたのは私だけだった。

そうとも知らずに自惚れて学校を早退してこんなところまで押しかけて……本当にいい迷惑だ。


「……っ」


じわり、と視界が歪む。泣きたくない。

グッと下唇を噛み締めて、彼から視線を逸らす。


「帰れ……」


そう言った彼の表情からはいつもの明るさなんて微塵も感じられず、苦しそうに顔を歪め、私を映すその瞳は深い悲しみに満ちていた。

明らかにいつもとは違う態度に心臓を締め付けられるような息苦しさを感じた。

なんでそうやって、全部隠そうとするの?

苦しいくせに、辛いくせに。

だから、今だってそんなに泣きそうな顔しているんでしょ?

人の心には容赦なく、ズカズカと踏み込んでくるくせに自分のことになると、目には見えない簡単には壊れないような頑丈なバリアを張るなんてズルいよ。


「……やだ」


どれだけ君が頑丈にバリアを張っていたとしても何度も何度も叩いて、壊して、君の手を掴みに行く。

君が私にそうしたように。


「は?」

「やだって言ったの」


私は、もう後悔したくない。