結局、私はこれ以上いても怪しまれるだけだと思い、ナースステーションから離れ、うなだれるようにロビーのソファに腰を下ろした。
「……どうしよ」
どうすることもできないのにそんな言葉がぽつりと口からこぼれた。
会えると期待してここまで来たのに結局会えなかった。
もうこのまま会えないのかな?
今日はもう帰ろう、とスクールバッグの肩にかけた瞬間、エレベーターの方に歩いていく一人の男の子が目に入った。
あの後ろ姿は……間違いない、カイくんだ。
そう思った私はすぐさまソファから立ち上がり、カイくんらしき人のあとを追った。
「……カイくん!」
後ろから会いたくて仕方がなかった人の名前を呼ぶ。
すると、彼は足を止めてゆっくりと振り向いた。
久しぶりに綺麗な澄んだ瞳と目が合って、トクンと胸が甘く高鳴った。
彼は私を見るなり、驚いたように目を大きく見開いた。
そんな彼に駆け足で近づいていく。
「な、んで……いるんだよ」
久しぶりに聴いたその声は、酷く困惑していており動揺の色が滲んでいた。
「教えてもらったの。カイくんが心配で……だから……」
「勝手に来んなよ……迷惑」
“迷惑”