私はそう思い、スクールバックを肩にかけて二人に「先生に早退したって言っといて」と伝えると、勢いよく教室から飛び出して彼のいる病院へと向かった。

会いたい時に会えるのは当たり前じゃない。
たった数秒ずれただけで後悔することもある。

だから、“今”会いに行くんだ。

地面を蹴って、必死に脚を動かす。
息が切れ始めても彼に会いたい気持ちだけがこみ上げてきて全力で走った。

ずっと止まっていたままだった私の時計の針を動かしてくれたのは彼だから。

私の死にかけの心を救ってくれたのは、カイくんだから。


「あの、すみません……!滝沢……滝沢快人さんの病室は何号室ですか?」


病院についてすぐにナースステーションでそう聞いてみるも看護師さんは怪訝そうな表情をしながら「そんな方は入院しておりません」と答えた。

増田くんたちも入院しているのはカイくんじゃないと言っていたけれど一体誰が入院しているのか、その人の名前は何なのかを全く知らないから彼の居場所を聞くに聞けない。

迂闊だった。彼に会いたい一心で飛び出してきたけれど、ちゃんと誰なのか、名前は何なのか聞いておくべきだった。