目を閉じてあの日のことを思い出しても、彼の後ろ姿がどんどん遠ざかって小さくなっていくだけ。

そのままいなくなるのではないかと怖くなってすぐに目を開ける。

そして、ぽつんと置かれて静かになった隣の空席にゆるゆると視線を向ける。

いつもはそこからけらけらと笑う声や楽しそうに話す声が聞こえてくるのに今は何も聞こえてこない。

静かすぎる隣に変な感じがして妙にソワソワして落ち着かない。

会いたいよ、カイくん。
どうして、君まで私の前からいなくなってしまうの?

“そばにいる”って言ったくせに……一人にしないでよ。


「あの、さ……楠川さん」


頭上から降ってきたあまり聞き覚えのない声に驚きながらもゆっくりと視線を上げた。

視線の先にいたのは、カイくんと仲がいい二人の友達だった。

えっと、増田くんと浜松くん……だっけ?

容姿が抜群に整った三人だとみんなから一目置かれているらしい、と江奈から聞いたことがある。


「どうしたの?」


一体、そんな二人が私に話しかけてくるなんてよっぽどのことなんだろう。

カイくんと話したことはあっても二人から話しかけられたのなんて初めてだから緊張して、手に汗を握る。