でも、今のカイくんの電話の様子だときっと今しか解決出来ないことなのだと思う。

私は彼に後悔してほしくない。

何があったのかはわからないけれど、私みたいに後悔の呑まれて生きていってほしくないのだ。


「マジでごめん……ありがとう。送ってやれないけど気をつけて帰れよ」

「うんっ!」


カイくんは私の返事を聞くと、不安げに瞳を揺らしながらすぐにどこかへと駆け出し、颯爽と走り去っていってしまった。

楽しみにしていたけれど、こればっかりは仕方がない。

生きていれば、こんなときもある。

さぁ、帰ろう。

家に帰って久しぶりにギターの弾き語りでもしようかな。

きっと、お母さんは驚くだろうな。何年もクローゼットに大切にしまったままのギターを私がまた弾き始めるのだから。

くるり、と体を180度回転させて、今歩いてきた道を今度は一人でとぼとぼと歩く。

頭の中を支配するのはカイくんのこと。

今までたくさん彼の表情を見てきたけれど、その中でも今日は一番といっても過言ではないほど酷く悲しげで切羽詰まった様子だった。

その表情を見ているこちらまで胸をえぐられるような気持ちになるほどだ。

大丈夫かな……?