どんなに渉くんが私のことを想って言ってくれたことだからって私一人だけこの先の人生で幸せになろうだなんて身勝手な話だもん。
「私が手を見てたら注意されちゃった」
おどけたように笑って言えば、江奈の瞳が一瞬切なげに揺れた。だけど、私は気づかないフリをした。
そして、江奈も同じくおどけたように笑い「本当、自分の手がちょっと綺麗だからって」と冗談っぽい口調で言った。
きっと、暗い話にならないように優しい彼女は気を遣って冗談のようなことを言ってくれたのだとわかっていた。
「その代わり、江奈は顔とスタイル抜群じゃん」
だから私もその優しさに甘えて、会話に合わせ、不貞腐れたようにムッとした顔を江奈に向ける。
だって、私とはまるで違う背丈で160センチだよ?
私なんて150センチしかないんだから。
足だって長くて、その綺麗に整っている顔が羨ましいよ……!
ちょっとくらい大人っぽさを私にも分けてほしいくらいだ。
この童顔をどうにかしないといつまでも年齢より下に見られちゃうんだから!
「普通じゃん。陽音が低いだけなんだよ?というか、ちっちゃい方が可愛いと思ってる私からしたら陽音の言葉が嫌味にしか聞こえないでーす」