あの日、私に残ったのは罪の意識だけではなく、想像を絶するような恐ろしいトラウマも心に深く突き刺さっている。

大切な人を失うのも、あの日のことを思い出すのも辛くてまだ前に踏み出せていない。

だけど、ちょっとずつ、ほんのちょっとずつだけど私は明るい未来へ歩み始めている気がするんだ。





「学校からカラオケまでって地味に遠いよな」

「ワガママ言わないの」

「はーい」


放課後になり、歩き慣れた道を二人並んでゆっくりと歩く。

私の歩幅にちゃんと合わせて歩いてくれてさりげなく車道側を歩いてくれるカイくんは紳士的だ。


「何歌おっかな?」

「あの曲は今日も歌ってくれよな」

「仕方ないなぁ」


“あの曲”というのは私たちが大好きな曲。

“きみに、好きっていいたくて”だ。

いつもいつも歌えってうるさいからこの前リクエストに応えて歌ってあげたらなんかカイくんが泣きそうになっていた。

あのとき最初はなんで泣きそうなの!?と思ったけれど、内心はちょっと嬉しかったんだよ。


「仕方ないとか言ってほんとは歌いたいくせに」

「そんなこと言ったらもう歌わないよ」

「ごめんなさい」

「よろしい」


いつものようにテンポの良い会話をする。