周りの人たちの優しさや気遣いを一身に受けて、今日も私は生きることができているのだ。

一人じゃ、ここまで生きれてこれなかっただろう。


「まあ……久しぶりに……ね?」

「陽音は歌が上手いし、私、陽音の歌の大ファンだよ!」

「そんなに褒めてくれるの江奈だけだよ?」


私が歌を歌っていたのは、周りの人を笑顔にしたかったからという気持ちも少なからずあった。

純粋に歌うことが好きという気持ちもあるけれど歌うことで誰かの心に響けばいい、いつしかそんな気持ちが芽生えていたのである。

疲れた時、辛い時、嬉しい時、楽しい時、そんな様々な日々を歌でみんなと共有できればいいのに、と今もそう思っている。


「だって、ほんとに上手いじゃん!また、私にも聴かせてよね!」

「当たり前だよ!江奈にはお世話になってるし」


二人で盛り上がっていると、ちょうど予鈴がなったので、江奈は少し名残惜しそうにしながらも自分の席に戻っていった。

まだ完全に過去のことを吹っ切れたわけじゃない。
今だって、電車に乗るのは怖い。

あの時の記憶が蘇ってきて上手く息ができなくなって、変な汗がぶわりと噴き出てくるのだ。