そう思ったら私たちの友情は本物なのかな?とも誰かに疑われてしまいそうだけれど、これでいいんだよね。
人にはそれぞれの距離感と付き合い方があるから。
友達だからといって、その人のすべてを知っているわけではないし、それを知らないからと言って“友情が本物でない”ということでもないと思う。
まだ、私にはひどく残酷な過去を乗り越える勇気がないから。
そもそも、乗り越えられる自信もない。
もし、乗り越えてしまったら彼の存在を忘れたことになりそうで、怖いんだ。
「まあ、顔立ちもいいからね?。それで、なんて話しかけられたの?」
『手じゃなくて教科書を見てねぇとまた怒られんぞ』
確か、そう言われた気がする。
私は無意識にまた手を見つめてしまっていたから。
それはまだ彼のことが忘れられていないという何よりの証拠だ。
もうすぐ二年が経とうとしているのに私は未だに立ち直れずに、あの日から時間が止まったままで、本当は時間も気持ちも前になんて進んでいないのに進んでいるようなフリをしているだけ。
ねえ、渉くん。私は幸せになんてなれないよ。
だって、幸せになっちゃいけないんだ。