君は亡くなる前に何を考えていたのだろう。
一人、残されて何を思っていたのだろう。


「陽音ちゃんが握ってた自分の手を、愛しそうに見つめながら『陽音、陽音……』って何度も名前を呼びながら静かに泣いていたんだ……」

「っ……」


目頭が熱くなって鼻の奥がツンと痛んだ。
ぐっ、と唇を噛み締めて涙を堪える。

一つ瞬きをしてしまえば、私の瞳から大粒の涙がぽつりとこぼれ落ちるだろうというくらい目いっぱいに涙が溜まる。

私がいなかったら生きていられたはずなのにどうして私の名前なんて呼んでいてくれたの?


「最後までアイツは陽音ちゃんを想いながら亡くなったんだ。三つ目は、これ……実は渉から預かってたんだ」


そういって私に淡いピンク色の封筒を差し出した。

なに、これ……?


「ずっと、渡せずにいて申し訳ない。でも渉を失って不安定な陽音ちゃんにこれを渡してしまったら壊れてしまいそうな気がして渡せなかったんだ。
これは俺にもしものことがあったら、陽音ちゃんに渡してくれって渉から頼まれていたもので。この前、陽音ちゃんに会ってから次どこかで会えたら必ず渡そうって持ち歩いてた。だから今日会えて本当に良かったよ」


動揺する気持ちを隠しきれないまま、震える手で室さんから封筒を受け取った。

これを、渉くんが私に……?