「一つ目は、俺はもうすぐ父親になるんだ。渉を亡くして絶望していた時に俺を支えてくれたのが彼女なんだ」
室さんは奥さんのお腹に手を当てて、愛おしげに微笑んだ。
すると、奥さんもにっこりと陽だまりのような笑顔を浮かべて室さんの手に自分の手を重ねた。
そうか。室さんにも私にとってはカイくんのように支えてくれる人がいたんだ。
だから、今こうしていい意味で日々を笑って過ごせているのだ。
「この前の言葉は陽音ちゃんにも支えてくれる人がいるってことに気づいて欲しくて言ったんだ。それが君を傷つけてしまったならすまなかった」
「……私の方こそ、八つ当たりしてすみませんでした」
何も、知らなかった。私はまだまだ子供だったのだ。
室さんの気持ちに気づかずに自分の気持ちだけをぶつけてワガママな人間だ。
「いいんだよ。二つ目はあの日の陽音ちゃんを助け出してからの話」
「私を、助け出してからの話?」
「そう。言い訳にしか聞こえないと思うんだけど、俺はあの後、仲間を連れて渉を助けに行ったんだ。だけど俺が助けに行った時にはもうほぼ息をしていなくて……」
何も、言葉が出なかった。