本当に歌には様々な不思議な力があると思う。


「ほんとだよな」

「陽音ちゃん……!」


後ろから聞き覚えのある声がしてゆっくり振り返ると、そこには夏休みにも会った室さんが立っていた。

ただ、夏休みに再会した時とか違うかったことはその隣にお腹の大きい女性がいたことだった。

その人が室さんの奥さんで彼女が妊娠中なのだというのは見てすぐにわかった。


「室さん……夏休み以来ですね」

「そうだね。また会えて嬉しいよ」


室さんはカイくんと私を交互に見ながら柔らかく目を細めて言った。

すべてを知っているカイくんと奥さんは互いに会釈をしただけで、気を遣ってくれたのか黙って私たちの会話を聞いていた。

正直に言うと、もう会いたくなかった。

この間のことは謝らなきゃいけないとは思っていたけれど…さすがにいきなりは気まずいし、何より心の準備ができていない。


「この前は久しぶりに再会できて恥ずかしながら俺もいっぱいいっぱいになってしまってちゃんと話せなかったんだけど、実は陽音ちゃんに伝えたいことが三つあるんだ」


「え?」


突然の言葉に私は目を丸くして驚いた。

三つってなんだろう……?