なんでいまさら“好き”とか言われて照れているのよ。
だけど、もう本当は気づいている。この気持ちの正体に。ただ、言葉にするのが怖くて伝えられない。
また大切な人を失ったらどうしよう、と思ってしまうから。
「ほ、ほら……!褒めてないで早く次歌ってよ!」
照れているのに気づかれないようにわざとカイくんを急かす。
こんなつもりじゃなかったのに……。
カイくんが……好きかもしれないなんて……。
いや、かもなんてレベルではない。
もう好きなんだよ。
気づいたら好きで、心が無意識のうちにカイくんを求めていたのである。
それから二人で三時間ほど歌ってからカラオケから出た。
カイくんは本当に歌が上手くて、正直ビックリした。
そのルックスで歌まで上手なんて天は二物を与えずというのはこういうことを言うのかもしれない。
「俺さ、音楽好きなんだよね〜」
「そうなんだ」
「楽器とかは全然ダメなんだけど聴いたり歌ったりするのほ好きなんだ」
「いいよね、歌って。声で自分の気持ちを込めることができるしさ」
人を喜ばせたり、元気をもらえたり、感動させられたり、切なくなるほど胸を締め付けられたり。