「なに聞き惚れてるんだよ。次、お前の番だぞー」

「べ、別にそんなんじゃないし!」


なんて、言いながらもカイくんの歌声に聴き入ってたのは誰だって話だ。

慌てて選んでいた曲を入れると、イントロのメロディが流れ始める。


「おっ、さっそく歌ってくれるんだ。俺のための曲」

「別にカイくんのために歌うんじゃないし!変な勘違いしないでよ!」


あぁー!カイくんが余計なことを言うから曲始まっちゃってワンフレーズ歌えなかったじゃんか!

心の中で文句を言いながらも慌てて次のフレーズから歌い出し、精一杯心を込めて歌う。

やっぱり、歌っていると心が晴れるし、何より楽しい。

自分の想いを声にのせて誰かに伝えることが改めて大切なのだと感じさせられる。

無事に歌い終わると、カイくんがうるさいくらいパチパチと拍手を贈ってくれた。

こんなふうに自分の歌で人が喜んでくれる姿を見るとやっぱりとても嬉しくて仕方ない。


「やっぱり、お前すげーわ」

「褒めすぎ。てか、なんで泣きそうになってんの」

「俺、ハルの歌声好きだなぁ」

「っ、」


質問の答えになっていないのにキュンと胸が甘く高鳴る。