彼を自分のせいで死なせてしまったというどうしようもない罪悪感に押し潰されそうで、上手く歌うことができなくなっていたのだ。
でも、今は無意識のうちに自ら口ずさんでいた。
それに私自身が一番驚いた。
私……いつからまた歌えるようになったの?
「ハル、歌上手いな」
「そ、そんなことないよ……!」
街で開催されるのど自慢大会に参加して優勝したこともあったくらい音楽に囲まれた生活をしていた。
だけど、長い間歌っていなかったから当時のよりレベルは落ちていると思う。
「いや、マジだって。俺、ハルの歌声好きだわ」
「なっ……!」
「もっと歌って。あ、また今度カラオケいこうぜ」
「え、やだぁー」
「嘘つけ。行きたそうな顔してる」
むっ……バレていたか。
思えば、カラオケに行くのも好きだった。
好きな曲を歌って、自分の声で流れるメロディと一緒に音を紡いでいくのが気持ちよかったのだ。
久しぶりに歌いたいな、と心の中に長い間眠っていた感情がふつふつと湧いてくる。
「バレた?」
「バレバレだっつーの」
耳元から流れてくるメロディを目を閉じて聴きながら隣にいるカイくんの体温を感じて口唇を緩めた。
ふわり、と生ぬるい風が吹いて頬を撫でる。
なんだろう……この感じ。
心が変な感じで、ソワソワするのに不思議なくらい落ち着いていてすごく心地いい。
この気持ちに名前をつけることは、まだできない。
だけど、私の心の中で“カイくん”という存在がどんどん大きくなっていることは確かだ。