そんなことを言われるなんて思ってもいなかった。

みんなは忘れなさいと言うのに……どうしてカイくんは反対のことを言うのだろう。

それは私に同情して言ってくれているの?
それとも、私の気を引くためだろうか。


「だって、みんなが忘れろって……」

「お前が……お前が、忘れちまったらその人は本当に終わりになっちまうんだぞ!?」


珍しく少し荒ぶったように、サラサラな前髪から切なげに揺らした双眸を覗かせ、まるで私の心に訴えかけるように言ったカイくん。

終わり……ってどういうこと?


「もう、渉くんはいないんだよ?」


もう二度と私の元に帰ってきてくれることはない。

私の言葉を聞いた彼は荒ぶっている気持ちを落ち着かせるように一つ深呼吸をしてゆっくりと形のいい唇を開いた。


「死んだからって何もかもが終わりじゃない。そりゃあ、形上は終わりなるかもしれないけど」


カイくんの硝子玉のように澄んだ瞳が私を捉え、吸い込まれてしまいそうなのに、何故か彼から目を逸らすことができない。


「なにいって……」

「その彼はお前の心の中でずっと生き続けてる。お前が彼のことを忘れない限りその彼は死んでなんかない」