滲んた視界の先にいる彼はとても優しくを細めており、それでいてどこか切なげに笑っていた。
「お前は幸せにならないといけねぇよ」
「えっ?」
「だって、その人はお前の幸せを願ってたんだろ?」
───……幸せになれよ……陽音
確かに彼は別れ際にそう言った。
でも、そんなの私の心が許さない。
彼の命を奪った私は幸せになんてなれない。
たとえ、みんなが許してくれても私が許せないのだ。
「ダメだよ……っ、それに私……早く渉くんのこと忘れなきゃいけないのに……」
こんなときに限って、言わなくてもいいような弱音ばかりぽろぽろと口から溢れ出てしまう。
でも、それは私の頬に触れているカイくんの手がとてもあたたかくて、私の心をきつく縛り付けている罪悪感をほんの少しだけ溶かしていくような気がしたからである。
「忘れなきゃいけないなんて誰が決めたんだよ」
まさかの発言に私は返す言葉を失った。
忘れなきゃいけないなんて決められてはいない。
だけど、きっとみんなが言うのなら忘れたくなくても忘れた方がいいのだと思っていたのだ。
「忘れられないなら忘れるな。それはお前にとっても大切な出来事なんだから」
「っ、」