何をしていても、どこに居ても、生きた心地がせず、ふと頭に浮かぶのは彼が私の隣で大好きな笑顔を浮かべている姿。

忘れられるはずがなかった。あの日から一度も。

握りしめられた手の感覚、彼の優しいぬくもり、私より一回りも大きな手。すべてが私を包み、心から安堵させてくれていた。

そして、彼を思い出すたびに私には彼しかいないのだと実感するのである。

あの笑顔が、頭に焼き付いていて、そっと目を閉じれば瞼の裏に君を感じている。

もう会うことのできない君を、ずっと探している。
あの日から私は二度と人に助けを求めない。

大切な人を作らない。
そう、心に誓ったんだ。

罪を犯した人間が、のうのうと生きていくなんて絶対に許されないことなのだから。





「だから……私は……幸せになっちゃいけないの……っ」


たくさんの人の幸せや笑顔を奪った私が幸せになっていいはずがない。

カイくんもこの話を聞いたらこんな私のことなんて嫌いになったでしょ?

できれば、早くここから立ち去ってほしい。


「……なぁ、ハル」

「な、にっ」


ずっと黙って話を聞いてくれていたカイくんの手が私の頬に触れ、流れる涙を親指でそっと優しく拭う。