そして、彼と手を繋いでいなかった方の腕を引かれ、歩き出した室さんに女子高生の私が抵抗できる訳もなく、どんどん渉くんから遠のいていく。
『やだ……っ!彼も一緒に……っ!!』
私がどんなに叫んでも、もがいても、室さんは止まることはせずに前へただ前へと進んだ。
『いや……っ!!!ねぇ、お願い……!!』
どんなに泣き叫んでも、ダメだった。
何度も何度も後ろを振り返って小さくなっていく彼を見ることしかできなかったのだ。
そして、結果的に私だけが助かってしまった。
次に渉くんと再会した時、彼はもう息をしていなかった。真っ白な布が顔にかけられており、無機質な部屋の中にぽつん、と置いてあるベッドに静かに横たわっていた。
そんなの……あんまりだ。
私を残して逝かないで。私を一人にしないで。
こんなの信じられない。何かの嘘に違いない。
きっと、何かの冗談だ。
『渉くん……っ』
それなのに……ねぇ、どうして?
どうして返事をしてくれないの?
『わ、たるくん……っ起きて……?ねぇ、起きてよぉぉ……っ!!!』
ぎゅっと握りしめた彼の手は最後に繋いだ時の温度とはまるで違い、酷く冷たかった。