温かくて、私の手よりも一回りも大きくて、まるで私の全てを包み込んでくれるかのような優しい手だ。

好き、大好き……絶対に離れたくない。

この手を離してしまったら、もう二度と彼に会えないような気がしてとても怖い。とてつもなく怖いのだ。


『渉くん……』


名前を呼ぶと、私の大好きな柔らかい笑顔を浮かべて


『幸せになれよ……陽音』


と、優しい声色でそっと言ったのが聞こえてきて、その言葉を発すると同時にぎゅうっと強く握り返された。

なにそれ……。そんな永遠のお別れみたいな言い方しないでよ……っ!

渉くんも一緒に帰るんだから。
絶対に置いていったりなんかしない。一人になんてさせないから。

そんな思いが強くなって、思わず彼の手を握る手にぎゅっと力が入る。


『陽音ちゃん…俺たちは人の命を助けるのが仕事なんだ……だから行こう』


まるで自分に言い聞かせるかのように、室さんが私にとっては残酷な言葉を呟いた。

突然、繋がれていた手が、するりと離れた。
彼のぬくもりが、優しさが、まだ手のひらにじんわりと残っている。